2月の水彩教室で描いたもの。テーマは「スクラッチ※」。スクラッチとは、塗った絵の具をかき取るという技法です。油絵では、ペインティングナイフでボリボリとかき取るのは結構一般的ですが、水彩、ことに日本の水彩画家でスクラッチを使う人は少ないかな。水彩画ではそれほどポピュラーな技法ではありません。
ひとつには、水彩絵の具のようなサラサラの絵の具をかき取るのは無理な気がするからかも。また、この技法を知っている人もタイミングが難しいので、かき取るよりはマスキングインクを使ったり、ホワイトで描いたりすることが多いと思います。それでも、海外の画家は結構使っているようで、YOU-TUBEにも爪や筆のお尻を使ってさっとスクラッチする動画を見かけます。
スクラッチの利点は、マスキングよりも面白い効果がでて、画面にも違和感なく溶け込む所。また、マスキングインクのように特別準備しなくても、その場の思いつきで使えるところもいいですね。欠点はかき取るタイミングが難しいのと、かき取ったあとは重ね塗りができないこと。
上の絵はあじさい寺で有名な鎌倉の「明月院」にある開山堂という小さなお堂です。これを題材にスクラッチの練習をしてみました。
スクラッチはタイミングが重要。絵の具を塗ったあとかわく寸前に絵の具をかき取ります。絵の具が濡れすぎていると、ひっかいたあとに絵の具が染みてかえって濃くなってしまいます。乾いたあとはカッターでも使わない限りかき取ることはできません。特に絵の具が薄い場合はごく短い時間しかかき取ることができません。絵の具は濃いめに溶いてたっぷり塗りつけるとラクです。
左上の木々。かき取る課程で自然な強弱や明暗がつきます。
塗った部分が一様に乾いてくる訳ではないので、はやく乾いた部分から先にスクラッチしていきます。
かき取るときのカードの角度と力のいれ具合で、太くも細くもできます。
一枚の絵のなかでこんなにスクラッチばかり使うことは希だと思いますが、この絵は練習のためにシツコイくらいスクラッチを使いました。皆さんも機会があったらどうぞ試してみて下さい。
水彩画「明月院 開山堂」
紙:ファブリアーノ・トラディショナルホワイト コールドプレス 300g
※英語では、濡れている絵の具を掻き取ることを「scrape」、乾いた絵の具を掻き取ることを「scratch」と言うようですが、日本語ではどちらも掻き取るという意味になるので、「スクレイプ」よりわかりやすい「スクラッチ」にしました。