今回の絵は東京、恵比寿の街路樹を描いたもので、時期は今年の3月頃。
こういう街角の何でもない風景を描くのが好きなので、この絵も何ということのない絵になりました。
スケッチとマスキング
スケッチと言っても、現場でのスケッチではありません。写真資料からいい感じの構図になるように再構成、鉛筆でカンタンにあたりを描きました。塗り残したいところをマスキング。ビルの1階、お店のサッシが白いので、そこもマスキング。マスキングについてはこちらのブログ記事を参照して下さい。
ウェットインウェットでファーストウォッシュ。
白いところを塗り残す必用がないようにマスキングしてあるので、画面全体に水を塗り、ウェットインウェットで色を置いていきます。色はアタリの線をはみ出してもOKです。むしろはみ出す方が水彩画らしい絵になるでしょう。建物が入ると硬い絵になりやすいので、それも軽減してくれます。春先の木々をしっかり描きたいので、黄緑色は濃いめにしました。スプレーで霧を吹いてテクスチャーを加えてあります。シャドーを描く(グリザイユ)
乾いたら、シャドウを先に描きます。明暗の暗いところを先に描いてしまう方法をグリザイユと言います。(詳しくは奥津国道先生の著書 水彩画プロの裏ワザ をご覧下さい。)グリザイユで描くか、普通に「明→暗」と描くか、迷うところです。どちらも一長一短がありますが、グリザイユを使うと写実的に描けるので、試してみる価値はあり。欠点は絵が硬くなることですが、ウェットインウェットを併用するなど工夫をすれば補えるでしょう。
なお、シャドウを描く際に、茶色や深緑色を滲ませて深みのある色にしています。また、青空の反映としてマンガニーズブルーを滲ませていますが、これは必ずしも滲ませる必用はありません。好き好きです。
街路樹の葉っぱは、塊ごとに陰影をつけていきます。葉っぱ一枚一枚はまったく無視して描きました。ただし、境界が樹木の葉っぱらしい感じになるように豚毛の筆でスタンプするように描いています。塊がハッキリしないところもありますが、そこは創作で曖昧なところを残さないように全部塊に分けてしまいます。
ビルを描く
赤茶色のビルに色をつけました。すでに明暗は描いてあるので上から赤茶色一色で塗ってしまってもいいようなものですが、さっぱりしすぎて物足りない気もします。そこで味付けに紫色を滲ませました。街路樹を描く
街路樹の葉っぱを緑色で描いていきました。これもすでに陰影ができているので、単純に緑をおいていきます。黄緑をのこして明るくするところをつぶさないように気をつけながら、豚毛の筆でスタンプして木の葉らしい感じを出しました。
緑は余り彩度の高い色を使うと、絵が安っぽくなります。海外の画家には、緑は黄土色や深緑、茶色等、相当彩度を押さえた色で描いた作品を数多く観ることができます。どのくらい彩度を押さえるか、その辺は好みでかまわないと思います。
マスキングを剥がす
マスキングを剥がしたところ。このままではマスキングしたところが目立ちすぎるので上から色を置いて絵になじませていきます。あとから薄い絵の具を置いていくことを「グレージング(グラッシ)」といいます。ごく薄い色でも上から塗ると、画面に溶け込ませることができます。
完成
マスキングで抜いたあとに色をつけて、さらに車や道の奥などを描きました。道路や歩道の植え込みなど少し手を入れて完成。
絵は業務用のA3スキャナで取り込んでいますが、画像にすると多かれ少なかれ、実物の良さが損なわれてしまいます。そのうちどこかで展示したいですね。
お付き合いありがとうございました。
水彩画「渋谷区恵比寿4丁目」
紙:ウォーターフォード中目 300g
実際の場所はこんな感じの所です。